スマートフォンを高々とあげてモナ・リザを撮る来館者たちを後ろから撮影した写真が、ameicanPHOTOという写真情報サイトのコラムに載っていました。なんというか、美術館で写真を撮るイケてない人たちの図っぽい。
しかし2010年あたりから、MoMAを始めとしてニューヨークの美術館では、来館者の撮影を許可する流れになってきたようです。コラムの冒頭は批判的で、写真家は作品へのダメージや著作権など多くの課題と妥協しながら撮影してきたのに、美術館はなし崩しで撮影を許可し始めている、という論調でした。
先月森美術館で観た「シンプルなかたち」展でも、来館者が作品を撮影する光景に遭遇ました。
通常の展覧会では珍しいことですが、森美術館の企画展は、営利目的で使わないことを条件に撮影可能な作品がいくつかあります。今回は3点のインスタレーション作品が撮影できました。ただ、美術館側が撮影可能な作品をコントロールしているので、なし崩し的な例とは同じではないことは前提です。
友人から聞いてはいたものの、静かに鑑賞している人たちが特定の展示室で写真を撮りはじめるというのは意表をつきました。オラファー・エリアソンの展示室では、「ほらほら、そこに立ってて」と不機嫌な息子にiPhoneを向けているお父さんに名所旧跡感があったり。邪魔してスンマセン、と恐縮しつつ展示室に入って罵声を浴びる…ことはなかったです。
と書くと、作品もロクに観ないで写真を撮るなんて、ケッ、無粋な!と鼻息荒くなってる人だと思われそうですが、私は美術館の新しい風景だと感じました。コラムでは、「写真を撮ることで美術館の体験を記憶するのではなく、(写真の)イメージによって美術館を体験しているのだ」という意見も取り上げています。写真は記録媒体ではなく、体験の仲立ちするものに変化していると言い換えられるかな?森美術館も、写真を撮るという選択肢を鑑賞の一環に加わえて、SNSで共有するところまで想定して鑑賞に広がりを持たせているともいえそう。
実をいうと、私はゲキ重い一眼レフを持っていってモタモタしただけでした。これこそ無粋でありますね。
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