博物館学的な価値や博物館の裏舞台が見られるのを期待して行ったのですが、見終わって感じたのはもっと広く、一つの大きなプロジェクトが完成するまでのひとつひとつの仕事の尊さでした。カメラは、古い展示室を解体する作業員から、動物学の研究者、剥製師など、この大改修に携わるあらゆる人々の仕事を捉えます。展示室を解体するブルドーザーを動かしている人、資料の蝶を展翅している人、クレーンで剥製を降ろしている人、シマウマの剥製に彩色している人、展示室の照明を調節している人。みな共通して、目の前の自分の仕事に集中している真摯なまなざしが印象的でした。時には自分の領分を守るため、一歩も譲らない議論が起こったりもします。もしかしたら、自分が関わっている任務が、最終的にどんな形になったかを見ることがない人もいたかもしれません。しかし、これらここに集結したあらゆる仕事が積み上げられなければ、プロジェクトは完成しなかったのです。モザイク画のように、遠目から見れば一つの絵として認識されるけど、近づくと小さな破片でできていたことがわかる、というのと同じだと感じました。博物館についての映画を見たというより、仕事をするってこういうことなんだな、と自分の毎日を改めて振り返るような気持ちになりました。
ちなみに私はフィリベール監督の作品を、他にも二つ見に行ったことがあります。精神科診療所を描いた『すべての些細な事柄』と、ルーブル美術館を描いた『パリ・ルーブル美術館の秘密』です。どの作品も、声高でも押し付けがましくもなく、遠くの方から愛情とユーモアの気持ちを持って見つめているような雰囲気があります。信頼できる視線を持つ映画監督だと、彼の作品を見るたびに思います。
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