やっと『Seven Days in the Art World』を読み終わりました。いやはや、生き馬の目を抜くとはこういうことかと思わされる世界が描かれていました。他人に出し抜かれないよう、そして常に優位に立てるように振る舞う現代アート界の住人たちの記録、という趣の本でした。
何よりも面白かったのは、実在する登場人物たちの描写です。着ている服、アクセサリー、立ち振る舞い、表情まで詳細に描かれており、それが一層この世界の熱に浮かされたような現状が目の前に広がるような気持ちになりました。著者であるSarah Thorntonが有名コレクターとアートフェアをまわっていた時、とあるギャラリストがコレクターに向かって「彼女はあなたの新しいコレクション?」と耳打ちするところを聞いてしまった場面や、アートマーケットを動かす力を持つアート雑誌オーナーのスノビッシュで回りくどい話し方、などなど、あちこち突撃取材を敢行する著者のちょっと毒気が効いた筆遣いに苦笑させられたりもしました。
私が勉強していた博物館学部でも、現代アートや美術館の現状について取り上げることもありましたし、現代アート志向の人もいたので、ここに書かれているのは全く知らない世界ともいえませんでした。しかし牧歌的とも家庭的ともいえたあの学生生活とはあまりにもかけ離れた世界に、しばし呆然とする一冊だったのでした。
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