東京都美術館の「生活と芸術ーアーツ&クラフツ展」を見に行きました。ちょうど桜が満開で、上野は今まで見たことがない程の人出でした。さて、この展覧会はイギリスのヴィクトリア&アルバート美術館との共同企画で、イギリス、ヨーロッパ、日本という3つの括りでアーツ&クラフツ運動について展示しています。私が初めてアーツ&クラフツ運動に触れたのは、2000年、今はもうない伊勢丹美術館で「マッキントッシュとグラスゴー・スタイル」という展覧会においてでした。直線的なデザインに草花や人間など有機的な形が組合わさった作品は、私の印象に深く残りました。今回もアーツ&クラフツ運動の父と呼ばれるウィリアム・モリスを始め、マッキントッシュはもちろん、モダンな銀器をデザインしたドレッサーの作品も展示されていました。さらに、この運動がヨーロッパへ広がり、最後のコーナーでは柳宗悦が率いた民藝運動を日本のアーツ&クラフツと捉えた展示構成となっていました。場所を越えて一つの輪がつながったような、とてもよい構成の展覧会でした。
帰り道、お花見客の合間を縫って戻る途中、別の美術館に「アーツ&クラフツ展」の別のチラシがおかれていました。「Have you ever thought of correct design as well as good design? いいデザインだけでなく、正しいデザインについて考えてみたことがあるだろうか」という文字が並び、裏にはプロダクトデザイナーの深澤直人氏のことばが記されていました。正しいデザイン、私は考えたことがありませんでした。いいデザインについては好き嫌いはあるにしてもはっきりと言えますが、「これは正しいデザインだね。」というのは何だか不思議な響きです。しかし、これがアーツ&クラフツ運動の本質を表すものなのだなあ、ということがじんわり感じられました。深澤氏の文章によれば「社会の不正義を正す万能薬として、正直で充実した生活を目指す哲学の基礎となる」アーツとクラフツのあり方が19世紀末のイギリスで始まり、形や素材が変わりながらもその哲学が共有されてきたことに、ぐっと深いものを感じました。
「アーツ&クラフツ展」ウェブサイト
0 件のコメント:
コメントを投稿