2017年8月15日火曜日

すごいぞ!!コピーの世界

大人はそろそろお盆休み終わり。でも小中学生の皆さんはまだ夏休みですね。

もしこれから山口に行く機会があったら、YCAM(山口情報芸術センター)を訪れてみてください。以前このブログで紹介した『学習まんが アフォーダンス』、『学習まんが 記号とアブダクション』を描いたコルシカさんによるしくみまんがを手に入れることができます。タイトルは『しくみまんがシリーズ すごいぞ!!コピーの世界』。登場人物は原始人とななちゃん、そしてコピーのしくみを教えてくれるY先生という異色の組合せです。

      すごいぞ!!

 
コピーといってもコピー(複製)コピー(複写)、違いがあるんだよ、という内容です。パソコンでバックアップを取るのはデータのコピー(複写)、友達の宿題をうつす宿題のコピー(複製)…おっと、大人の私も混乱してきました。また、ここからワンステップしてグリッチアートまで言及しているのは、メディア・テクノロジーを使った表現を研究しているYCAMらしい展開です。

    冊子は蛇腹状


折って穴をあければ本みたいに読めるよ!



















しくみまんがシリーズは、半年に一回ぐらいで発行されます。次回のテーマはY先生によると…「4つの羽を持って空を自在に飛び回るなにかが出てきそうだワイ」だそうです。さてさてなにが出てくるか楽しみに待っていましょう!

2017年6月3日土曜日

式辞を読む

4月に大学に入学された皆さんにおかれましては、5月病を克服し夏休みの予定も決まっている頃でしょうか。一方、私は6月になってもまだ、3つの大学の式辞の読み応えについて考えています。

ひとつは関西学院大学社会学部学部長の「嫌がらせのような式辞」。あるバンドのフレーズを引用したもので「関学に入ってウェイウェイ言っても就職はなんとかならないよ、ウェイウェイしてSNS炎上させちゃダメだよ、プライド高いだけではダメだよ、4年後はすみやかに大学生ではなくなってね」という内容でした。このウェイウェイ加減は、今でも実はネタなのでは?と疑ってもいます。

もうひとつは京都市立芸術大学学長の式辞。私が注目したのは、「人とつながること、協力すること、ここにないものを想像すること、別の社会のあり方を構想すること、アートとはその技である。『生き延びるための技』の基本を学ぶ場が芸術大学である。創作は社会の困難にも関わり〈わたし〉の問題はかならず〈社会〉の問題につながる。それを知ることで表現も深まり、一人ひとりの問いが多くの人を揺さぶるものとなる」というところ。

そして情報科学芸術大学院大学(IAMAS)学長の式辞。「IAMASでの制作や研究は『死者と未来の子どもたち』に見せたいものであるか考え、『死者と未来の子どもたち』に恥じないでいられるように必死であってほしい。あなたは社会で平然と使われる『人材』である以前に、死者たちの願いや無念に耳を傾け次の社会を築く一人の人間、人格である。みなさんが学ぶべきことは『人間世界』が存続していくための『アート』、人間が繁殖するだけでなく人間らしく生きるための『技法』です」。

ウェイウェイしないでサクッと就職するための大学に行くのもひとつのあり方です。しかし、京都市立芸大とIAMASの式辞は「善い人間」になることを促している点に誠実さを感じました。そして思い出したのは、IAMASで学んだメディアアーティストの真鍋大度が子ども向けのWSで「テクノロジーを正しく使ってほしい」言っていたことです。その時はアートに「正しい」という言葉をあてるのが不思議でしたが、今は腑に落ちますよね。私が区別したいのは式辞に格調があるとかないとかではなく、視座と見通しの広さです。

2016年11月25日金曜日

RE/COLLECTION

青山のCOMME des GARÇONSで行われたインスタレーション「RE/COLLECTION」。デザイナーの川久保玲が自ら選んだ過去のコレクションから10点程選んだものを白のシーチングで作り直したものを展示・販売しています。全て無地で作られているため造形の完成度がディテールまで際立って見えました。不自然に見えるひだやふくらみも、全体を見ればどこを動かしてもダメになってしまうバランスの妙…。(ちなみに20日までオーダーを受け付けていたそうです。価格は30万円から50万円とのこと)。

COMME des GARÇONSについていつも思うのは、同じ形でも若い人は若いなりに、年を取った人は年を取った人なりに似合うようになっているということです。私は一枚だけ持っている一張羅のキュロットを何年も春夏秋冬着たおしているのですが、この先も着ている自分が想像できます。

来年5月にはメトロポリタン美術館コスチューム・インスティチュートの特別展でCOMME des GARÇONS取り上げられるとのこと。日本への巡回も待たれます。

Pierre Huyghe - Part II エスパス・ルイ・ヴィトン

ルイ・ヴィトンの表参道店にあるギャラリー、エスパス・ルイ・ヴィトンで『Pierre Huyghe - Part II』 を見ました。実は閉所や暗所は平気な私でも圧迫感があり心拍数が上がってしまう空間構成だったので、暗さや音に敏感な人は注意した方がいいかもしれません。というわけでじっくりと楽しめませんでした…。

この企画展はルイ・ヴィトンのメセナ活動であるフォンダシオン・ルイ・ヴィトンがキュレーションを行っています。ピエール・ユイグのこの作品もフォンダシオン・ルイ・ヴィトンの所蔵品です。業種は違いますが日本でいうと、サントリー美術館のような位置づけになるのでしょうか?

フォンダシオン・ルイ・ヴィトンの建物はぐにゃっと光る建築が特徴のフランク・ゲーリーが手がけています。ちなみにこれは今年の1月に、ゲーリーのアイデアスケッチや模型を展示した企画展を見に行った時の写真。



















ピエール・ユイグはもう少し体調に余裕があるときに行けばよかったかも…。

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Pierre Huyghe - Part II
表参道エスパス・ルイ・ヴィトン東京
2016年9月30日〜2017年1月9日
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2016年11月5日土曜日

学習まんが第二弾『記号とアブダクション』発売!


学習まんが『アフォーダンス』を読んだみなさん、耕太くんと里音ちゃん、そして博士が帰ってきましたよ!昨年bitechoの記事でも紹介したエクリの学習まんが第二弾、『記号とアブダクション』が発売されました。

記号論を確立した哲学者チャールズ・サンダー・パースがテーマです。

パースは、対象を記号として読み取り解釈し世界との関係を理解するという、記号とアブダクションの理論を構築しました。実感するのがちょっと難しいのですが、理解のきっかけを掴むと私たちを取り巻く世界が急に広がります。

内容についてはこのあたりにして、学習まんがというフォーマットについても詳しく紹介します。

まんがの最後には「おうちの方へ」と大人向けのあとがき風の解説がついています。まんがではパースの論理の全体像を紹介し、「おうちの方へ」ではなぜパースを取り上げたか、その意図や読者に期待することが書かれています。子ども向けの学習まんがの体裁を取っていますが、大人向けの仕掛けがちりばめられているわけです。

アフォーダンス理論と同じくパースのアブダクションは注意深い洞察が必要です。輪郭を捉えるのには時間がかかりますが、まんがであることのメリットは哲学や心理学といった領域の垣根を感じさせない軽やかさにあります。

冊子版はエクリストアから一部800円で購入できます。ウェブ版の公開も予定しているそうですが、個人的にはノスタルジックな二色印刷と紙の質感を楽しむためにも冊子版をおすすめします。

「思想としてのデザインを、デザインされたテキストで届けるメディア」
ÉKRITS / エクリ




2016年9月8日木曜日

『木々との対話ー再生をめぐる5つの風景』

 まだまだ暑さの厳しい9月某日、台風の合間をぬって東京都美術館の企画展『木々との対話ー再生をめぐる5つの風景』を見に行きました。


 私は木にまつわる仕事をしていることもあり、作品の材質や加工方法などが興味深い企画展でした。今回は、土屋仁応、須田悦弘、舟越桂の三人に注目したいと思います。

 まずは土屋仁応。猫や羊のほか想像上の生き物をモチーフにしている彫刻家です。気になる材質は楠、ケヤキなど、木彫仏像に使われるものが多いようでした。彫り跡を残した部分とすべすべに丁寧に仕上げた部分で造形のメリハリがついています。自然な手技がありしかし人工的な精緻さもある作品が特徴的でした。

 作品は入ってはじめの展示室にまとめられています。同時に開催されていたポンピドゥー・センターの企画展を見てきたと思われる年配の女性二人組が「色っぽいわねー、脚が。ほら!」としきりにうなづいていたとおり独特の艶かしい雰囲気がありました。





羊の頭は荒めの渦巻きで毛のモワモワ感を。


一方、顔は磁器のような質感になっています。


こちらの猫はいい木目が活かされています。彫り跡が毛並みのようにも見えます。



















龍と猫。瞳には水晶やガラスがはめ込まれていて深い光を感じます。焦点がどこにあるかわからない、怖い雰囲気も。

これは土台とつながっているところを見せた作品。一木造にしては大きすぎると思うのですが、どこで接いであるんだろう…。

見つめあう生き物。展示室のボリュームや質感を強調させる照明も効果的でした。


 土屋さんの作品は装丁に使われているものもあり、私の大好きな小説、今村夏子の『こちらあみ子』の表紙も飾っています。


 須田悦弘は木を削って本物と見まごうような精密な植物の彫刻を作っています。版画の材料になる柔らかい朴などの木を使っています。植物が生えるはずのない場所に生えている(展示されている)という文脈のゆがみにクラクラッ!とさせられる作家です。今回もあまりに意外すぎる場所に展示されているため、事前に場所が明かされていました。それでも見つけられない人がいて、私も年配の女性から小声で「どこにあるか、わかった?」と聞かれ、こっそり教えてさし上げました。そんな驚きの共有も鑑賞の面白さかもしれません。

こんなところにユリが生えていたり…。

 そして舟越桂。撮影不可だったので写真はなしです。どの作品もこれは舟越桂だ、と分かる特徴のある作家です。そのためによく知っていると思っていたのですが、胸像は実寸より大きく、自分の中で感じていたサイズより一回りか二回りぐらい大きいようにも感じました。本物、実物を見るのは大切。まさにそう思わされました。


 この展覧会、土屋仁応の仕上げの使い分け、須田悦弘の展示方法、そして舟越桂のサイズ感に注目してみてほしいです。

 ちなみに、東京都美術館は調度品の色使いが絶妙で大好きです。これは帰りに撮った写真。エドワード・ホッパー風味になりました。


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東京都美術館
木々との対話ー再生をめぐる5つの風景
2016年7月26日(火)〜 10月2日(月)
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2016年6月1日水曜日

biteho記事公開「イギリス発、LGBT映画祭をオンラインで世界に発信」

bitechoで記事がアップされました。ブリティッシュ・カウンシルが主催したオンラインのLGBT映画祭について書いています。

【bitecho】 創造力を社会に生かすアートニュースサイト
イギリス発、LGBT映画祭をオンラインで世界に発信