2010年6月26日土曜日

大野一雄氏のこと

 日本の舞踏の第一人者である大野一雄氏が103歳で亡くなりました。私が大学に入って東京に来てすぐ、両国のシアターXで彼の舞台を見たことが思い出されました。15年以上前のことですが、急がないと生の舞台を見られなくなる(大変失礼ながら!)と思ったのを覚えています。カーテンコールの時、拍手を送る観客だけでなく、舞台の壁や床にも丁寧にお礼をするような動きがとても優雅で、目に見えない何かへの敬意にも見えたことが、とても心に残っています。それが私が見た最初で最後の舞台となりました。


 その後も車椅子の上でわずかな動きで踊る彼の姿をTVで目にした時、彼は踊ることが生きることなんだとと深く思いました。それは、芸術から見える世界の豊かさ、奥深さに改めて気づかされた瞬間でもありました。早朝のニュースで彼の死を知った時心によぎったのは、悲しみではなく、その豊かな世界を見せてくれたことへの感謝の思いでした。