2009年4月12日日曜日

台湾現代芸術事情

 大学院時代の友人を訪ねて、台北に行ってきました。彼女に案内してもらい、台北市内の現代アートスポットに行ってきましたのでご紹介します。

 まずはMOCA Taipei。ここは日本の植民地時代に小学校だった建物で、その後市役所として使われ、現代美術館へと改装された場所です。現在行われている企画展は「SPECTACLE-TO EACH HIS OWN」(〜4/12)。今活躍する台湾、中国の若いアーティストの作品が集められています。内容に入る前に、チケットについて少し。厚紙で作ってあり、切り抜いて紙飛行機が作れるようになっています。この美術館では毎回このようなお土産にもって帰れるチケットを作っているそうです。展覧会の構成は映像作品が多く、後半に絵画や立体の作品が集まっていました。小さい部屋に分かれた一階部分にそれぞれ映像作品を展示しており、建物の特徴に合わせたところもあるように感じました
       展覧会チケット          コンパクトサイズの図録

 そして夕食後連れて行ってもらったのが、IT ParkとVT Artsalon。IT Parkは、80年代終わりにアーティスト達がお金を出し合って場所を借り、自分たちの展示スペースを作ったのが始まりだそうです。アーティストの情報交換の場としても機能してきました。台北市文化局や国家芸術文化基金の支援と、写真スタジオの貸し出しなどで運営しているそうです。IT Parkの数件先の地下にあるVT Artsalonは展示スペースとクラブが併設されたような場所で、IT Parkよりちょっと若い世代の空間です。友人によると、タバコ会社やアルコール飲料会社と組んでプロモーションの場としても機能しているようです。両方ともアート関係者が集い、人脈を広げたり情報を交換したりするサロンのような趣がありました。

 と、盛りだくさんの台北現代美術探訪でしたが、熱い台湾のアートパワーを体感した半日でした。台北に行かれる機会があれば皆さまもぜひ!

Special thanks to Chi-Ping!



2009年4月5日日曜日

いいデザイン、正しいデザイン

 東京都美術館の「生活と芸術ーアーツ&クラフツ展」を見に行きました。ちょうど桜が満開で、上野は今まで見たことがない程の人出でした。さて、この展覧会はイギリスのヴィクトリア&アルバート美術館との共同企画で、イギリス、ヨーロッパ、日本という3つの括りでアーツ&クラフツ運動について展示しています。私が初めてアーツ&クラフツ運動に触れたのは、2000年、今はもうない伊勢丹美術館で「マッキントッシュとグラスゴー・スタイル」という展覧会においてでした。直線的なデザインに草花や人間など有機的な形が組合わさった作品は、私の印象に深く残りました。今回もアーツ&クラフツ運動の父と呼ばれるウィリアム・モリスを始め、マッキントッシュはもちろん、モダンな銀器をデザインしたドレッサーの作品も展示されていました。さらに、この運動がヨーロッパへ広がり、最後のコーナーでは柳宗悦が率いた民藝運動を日本のアーツ&クラフツと捉えた展示構成となっていました。場所を越えて一つの輪がつながったような、とてもよい構成の展覧会でした。

 帰り道、お花見客の合間を縫って戻る途中、別の美術館に「アーツ&クラフツ展」の別のチラシがおかれていました。「Have you ever thought of correct design as well as good design? いいデザインだけでなく、正しいデザインについて考えてみたことがあるだろうか」という文字が並び、裏にはプロダクトデザイナーの深澤直人氏のことばが記されていました。正しいデザイン、私は考えたことがありませんでした。いいデザインについては好き嫌いはあるにしてもはっきりと言えますが、「これは正しいデザインだね。」というのは何だか不思議な響きです。しかし、これがアーツ&クラフツ運動の本質を表すものなのだなあ、ということがじんわり感じられました。深澤氏の文章によれば「社会の不正義を正す万能薬として、正直で充実した生活を目指す哲学の基礎となる」アーツとクラフツのあり方が19世紀末のイギリスで始まり、形や素材が変わりながらもその哲学が共有されてきたことに、ぐっと深いものを感じました。

「アーツ&クラフツ展」ウェブサイト