2008年12月21日日曜日

七日間アート業界旅行

 Sarah Thorntonの『Seven Days in the Art World』という本を読み始めました。大学で美術史を勉強し、社会学の博士号を持つ作者による、現代美術業界を追ったドキュメンタリーのような趣のある本です。経歴からも分かるように、美術史だけでなく、社会学という少し離れた視点から現代美術のオークション、アーティスト、評論家、美術館について語っています。美術業界にどっぷり浸かった立場の人ではないところに魅力を感じ、手に取った次第です。

 そしてページを開いてわくわくさせられたのは、その臨場感ある語り口です。「午後4時45分、11月の午後のニューヨーク。クリスティーズのオークショニア、クリストファー・バーグは音声チェックを行っている。・・・」という、ミステリー小説のような冒頭に引き込まれていきました。何より面白く感じるのは、作者がアート業界への疑問に、全く手を抜かずにぶつかっていく姿勢です。内部にいる人たちにとっては「そこはあえて触れないで。そんなことみんな分かってるでしょう。」と言いたげなことにも、言葉を発していきます。「オークション」の章では、アート作品が市場経済に取り込まれ、まるで儀式のように売買されていることへの不思議、アートについて全く勉強したことのないアートコンサルタントの様子、そしてオークションに直接作品を出す現代作家について鋭く描写しています。

 今第2章の半ばまで読み進みました。まだまだ旅は始まったばかり。冬休みはこの本に没頭したいと思っています。