2012年6月12日火曜日

デザインと人が交わる場

 ドイツの芸術系出版社、GestaltenがGestalten TVというpodcastを配信しています。(因に、バックに流れている音楽がいつもかっこいいのも特徴。)今日はその中で紹介された、クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館館長のBill Moggridgeのインタビューについて書きたいと思います。この博物館はスミソニアン博物館の一組織で、豊富なコレクションからはデザイン史、装飾史、ファッション史などを辿ることができます。
 
 Moggridge氏はデザイン会社IDEOの創始者であり、初めてラップトップコンピュータを開発した人物として知られています。ところでIDEO本社はシリコンバレーのパロアルトという街にあります。今年2月にその街を訪れたのですが、私はどこが本社かなときょろきょろしながら歩いてミーハー振りを発揮しました。

 IDEOはこれぐらいにして、インタビューに話を戻します。私が面白かったのが、Moggridge氏がサービスをデザインすることについて語ったことです。これまで私たちは何か新しいことを伝え教える時、人を訓練してきました。例えば昔の電話は、公衆電話機で交換手呼び、交換手が相手を呼ぶ、という人対人のやり取りで行なわれていました。そこにはデザインの問題はありません。上手く機能しなければ人を訓練すればいいのです。しかし現代の私たちは、携帯電話で別の携帯電話を呼び、さらにそこから別のデバイスにも繋ぐ、機械対機械というプロセスがあります。人から機械、機械から機械のやり取りを上手く行なうためにデザインが必要になります。サービスに関わる課題は「デザインのチャレンジ」であり、「デザインの機会」と彼は語っています。

 インタビューの中で彼が、人が何かを始め、異なる背景を持つ人たちとコラボレーションを行なう時、space=場が重要である語ったことはとても示唆的です。歴史資料を保存し、解釈、展示するという場、そしてデザインのチャレンジ、機会について思考を広げる場。Moggridge氏の言葉からは、ここで人とモノと解決のプロセスが交わる場の実現を目指してると感じました。博物館は職場や学校のように、直接誰かと恊働する機会は少ないでしょう。しかし間接的にデザインが解決しようとする、また解決してきた問題を共に考えることがこの博物館のあり方だと思います。長らくデザインの現場に携わってきた人だからこそ自信を持って語れる世界に見えました。


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