2014年6月24日火曜日

「國立」問題をかんがえる


 今月24日から東京国立博物館で「台北 国立故宮博物院ー神品至宝ー」展が始まります。

 私がこの展覧会の問題を知ったのは21日(土)。ツイッターでの美術関係者、国際関係に詳しい人たちの投稿からでした。日本側がポスターなどのプロモーション媒体に「國立」を入れていないということが発覚したことが問題の発端でした。これを台湾メディアが報道したことで、22日午前0時までに正式名に修正しなければ、展覧会を中止すると台湾の馬英九総統が抗議したというもの。博物館側は正式名称を表記していますが、スポンサーである日本の新聞社やテレビ局が作成したポスターなどに「国立」の表記がありませんでした。日本は台湾を国家として認めていないために、大型企画展のスポンサーであるメディアが報道に準じた表記をした対応がもとになっているという背景があるようです。また、台湾と中国両方に故宮があり、どちらが國立を名乗るかでも両者で問題になっているということ。展覧会は無事に始まりましたが、台湾側の名誉団長として来日予定だった馬英九総統夫人は23日(月)のオープニングには参加しなかったそうです。

 ツイッターでは投稿をまとめている人もいて、なんとなく状況は分かるのですが、発言している人が何者か分からない場合があるのが問題です。何が起こっているのか、納得できるものをみつけてみることにしました。

 まずは問題を知った当日、台湾人の友人に聞いてみました。彼女はイギリスの大学院で博物館学を学んだ時のクラスメイトです。「文化交流が台湾と日本との間の外交問題でこじれているようで悲しい」と言ったところ「これは台湾の博物館の中でも一番重要な課題で、そもそも中国から台湾に博物館資料を持ってきた時点から始まっている。政府が名称について対外的にきちんと説明していないからややこしくなっている。個人的な意見だけど、これは政治的な問題だと思う」という返事がきました。ツイッターやブログを見ると「日本が不適切な対応をして台湾がおかんむり。日本の対応が悪すぎ。」というニュアンスで書かれているものが目立っていたり、記名の記事でもスポンサーの微妙な立場をにおわせていたりしていたので、一人の意見とはいえ、台湾側にどんな事情があるのかが分かりました。

 次に海外のメディアがどのようにこの問題を書いているかを調べてみました。東日本大震災で原発事故が起こったとき、海外の報道を見ていた方が状況がつかめた、と言っていた人がいたので、今回はそれをまねしてみました。23日(月)にGoogle newsでトップに出てきた、日本と台湾以外のメディアの報道をざっと読んでみました。私が選んだのは香港のSouth China Morning(南華早報)、AFP通信、Wall Street JournalそしてABC Newsの4つです。偏りがなるべくないようにするにはもっと媒体の種類を広げた方がよいのですが、私の能力の限界ではここまで。

 どれもおおむね事実を淡々と伝えている印象でした。主に、今回の問題が起こった発端の出来事、台湾が故宮博物院を作った経緯、現在の台湾と中国の関係、の三つが書かれていました。私が読んだ中ではAFP通信の記事が一番分かりやすかったです。馬総統のスポークスウーマンが取材に答え、日本が台湾側に謝罪し「國立」を入れるという電話を受け取ったが、事態が急だったので夫人の来日は見送った、というコメントで今回の問題は決着したと書いています。また、日本の立場としては、外交面では台北よりは北京とのつながりが深いながら、商業などでは台湾とのつながりは深い、また1895年から1945年まで台湾は日本の植民地であった、というところまで言及しています。興味深かったのは、故宮の資料を日本に貸し出した場合、中国に差し押さえられるのを台湾が懸念していたという点です。しかし2011年、海外から貸し出された資料の差し押さえを防止する法案を日本政府が通したことで、日本での展覧会を躊躇していた台湾が今回の展覧会の開催を決めたということです。

 台湾は中国の一部と主張している中国と、台湾を国家として認めていない日本、という長い歴史の流れの一つとして今回の問題が現れたようです。

 とりあえずここ数日で私が把握できたのはここまでです。







0 件のコメント:

コメントを投稿